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2026年10月01日 (木)

2026年10月号「心を結ぶ一本のロープ」

長く激しい雨が続いたあとは、大気も澄み、晴れ渡った青空に爽やかな風が心地よく感じられます。

先日は、保育参観にお運びいただきありがとうございました。

季節がいつの間にか豊かな実りのときとなってきたように、本園の子ども達も、実りのときを迎え、確かな成長の日々を過ごしております。

皆様には日頃より、ご理解ご協力をいただき、心より感謝申し上げます。

 

東京都の公立小・中学校では、毎年「道徳授業地区公開講座」が開かれます。

先日、ある小学校において、『心を結ぶ1本のロープ』という教材を使用した、3年生の授業を拝見いたしました。   

 

この教材は、「島根県出雲市で毎年行われている『くにびきマラソン』を舞台に、視覚障害者が伴走者とともに10キロの行程を完走する」心温まる実話に基づいています。

これは、今から25年ほど前に目にした小さな新聞記事に感動し、何としても子ども達に伝えたいと思い、私がまとめたものです。

あらすじは、「『走りたい』という視覚障害者からの願いを受け、悩んでいる市長に、5人の市役所の職員が伴走を申し出る。伴走者は『相手が気持ちよく走る』ことだけを考えて、冬の寒い夜も、仕事の後に練習に取り組む。そして当日は、5人で交代しながら伴走し、視覚障害者のランナーと見事にゴールインする」というものです。

事実と異なった話を子ども達にするわけにはいきませんから、教材を作るに当たり、出雲市教育委員会の方から膨大な資料を送っていただき、たくさんの取材を重ねました。視覚障害者から「走りたい」という願いを受けたときの市長の心の葛藤や、伴走を申し出た5人の思い、視覚障害者のランナーの気持ちなどに共感していく中で、『思いやりのある社会』のあるべき姿を、子ども達に感じ取って欲しいという、強い思いがあったからです。

 取材を進める中で、この実話には、さらに続きがあることを知りました。

送られてきた資料には、このように記されていました。

「その後視覚障害者の参加とともに、伴走を希望する職員の数も増えていく。そしてそのグループに付いた名前は、『愛走フレンズ』。『愛』は英語のEYE(アイ)につながる。『視覚障害者の目となって、愛をもって走ろう』という思いが込められている。さらに、視覚障害者からの申し込みは増え、『愛走フレンズ』だけで支えることができなくなる。それを知った出雲工業高校陸上部の1,2年生が協力を申し出てくれた。そして、迎えた大会の日。『愛走フレンズ』に加わった15,16歳の若者が、視覚障害者のランナーと1本のロープで結ばれ、懸命に駆け抜けていく姿があった。出雲平野には、大きな拍手がいつまでも鳴り響き、どこまでも温かな声援が広がっていった。」

 

この話の素晴らしさは、視覚障害者のランナーが伴走者のお陰で完走できたことを喜び、感謝することだけに留まりません。伴走者もまた、ランナーのお陰で完走できた喜びを共感しているところにあるのです。

日本には「お互い様」という言葉がありますが、まさに、お互いがいたからこそ成し得た喜びを、共に味わっているところに、真の素晴らしさがあるのです。この温かな心の交流こそが「思いやり」であると考えます。

「思いやり」とは、相手の置かれている立場や状況、その気持ちを推し量ろうとする心のはたらきです。単に困っている人に対する親切な行為に留まらず、常に相手の立場に立ち、どのようなことが相手の為になるのかをよく考え、行動することが求められているのです。

 

そう思いながら、本園の子ども達の様子を見てみると、他者を思いやる温かな心が確実に育っていると思える場面がいくつもありました。

これからも、多くの人との関わり合いから、互いに支え合って生きることの大切さを実感してほしいと願っています。

 

 本園では今後も、子ども達の確かな成長を目指して、子ども達一人一人と心を結び、伴走者の心をもって導いて参ります。